鈑金塗装工場のフロント担当者、通称フロントマンの仕事の一つに、協定というものがございます。

フロント担当者の仕事について書いた記事もございますが、今回はその中の協定という仕事にフォーカスした記事です。
アジャスターとの協定に困っているフロントマンの方へのヒントもあるかもしれません。

最終更新日:2025年11月15日

アジャスターと鈑金塗装工場が行う”協定”とは

”協定”でGoogle検索すると、

協議して定めること。相談して決めること。またその決めた事柄。特に、国家間の取り決めで、あまり厳重な手続きをしないで結べるもの。

https://www.google.com/search?q=%E5%8D%94%E5%AE%9A&oq=%E5%8D%94%E5%AE%9A&gs_lcrp=EgZjaHJvbWUyBggAEEUYOTIGCAEQRRg7MgYIAhBFGDvSAQgyMTE2ajBqN6gCALACAA&sourceid=chrome&ie=UTF-8

とあります。
保険会社のアジャスター、日本語に直すと事故調査員と言えますが、
アジャスターと行う協定は、主に「(一件の)事故における車両修理金額の確定(適正化)」と言えるでしょう。

相談して決めること、とありますが、一体誰のため、何のために修理金額を相談するのでしょうか。

協定は誰が何のために行っているのか

なぜ修理工場の見積もりがそのまま認められないのか。
修理工場が、人手不足の中雇用を継続し設備投資を続け顧客満足を継続的に得ていくために必要な金額を、なぜ無関係な保険会社の人間が入って修理金額の確定を行うのか。

単純に、「これまでの歴史上、板金塗装工場が根拠の無い見積もりを作ってきた結果」とも言えますし、「見積書にムダやムリ、つまり保険金詐欺とも捉えられかねない内容が含まれているから」とも言えます。
理由は一つではないにしても、実際に見積書を誰も点検せずにそのまま支払われるとなれば、きっと保険を使わない修理費との乖離が発生し、保険料も上がり続ける事でしょう。
昨今の鈑金塗装工場に対する信頼・信用の低下を考慮しなくても、協定は無くてはならないものだと考えています。

アジャスターの横暴ともいえる値引き交渉

もちろん、アジャスターの仕事は「板金塗装工場の見積もりを適正価格にする事」と考えれば、見積り金額が上がる事もあります。これは、鈑金塗装工場の見積もりに抜けがある場合に多いです。
例えば、画像では明らかに交換している部品が見積書から抜けている、明らかに行った作業が抜けている、このままではこの工場は赤字になるのでは、という場合にご指摘いただく事となるでしょう。

保険会社のアジャスターによっては、根拠もない金額調整=値引き交渉が仕事となっている場合もあります。
多くの鈑金塗装工場はこの根拠もない値引き交渉に苦しんでおり、結果的に鈑金塗装工場は減少し、10年後には半分も残らないと言われています。

まだ協定の現場、つまりアジャスターとの会話の中では、根拠もない値引き交渉がはびこっており、
工賃においては20年前、30年前とそう変わらない金額を「この地域の平均値である」等と交渉材料にしてきます。

アジャスターとの協定に困ったら

幸いにして、国交省への相談窓口が出来ています。
https://forms.office.com/r/CPqdGjJ3pw
指数の強要は独占禁止法の観点から認められておらず、工賃についても保険会社の考える地域対応単価には根拠となるデータ開示も出来ません。
1円も引く必要が無いとは言いませんが、自社の料金に根拠があるのであれば、それを提示する事が重要です。

加害者や被害者の方、またはご実費で修理する方からも、
「5年前、同じ内容で修理したけどすごく高くなっている」
と感じる方がいらっしゃると思います。

輸送費などの問題か原材料の高騰か、円安の影響か、恐らく単一ではない要因で部品代も工賃も値上がりをしています。

まとめ:車の修理がお金持ちのためのものにならないために

鈑金塗装業は、サービス業です。
AIは進歩してきておりますが、車を直すのは人間で、直す人以外にも多くの人が関わっています。
夏は暑く冬は寒い工場が多く、リモートも出来ない、多くの修理工場は人を育てるのが下手など、人気が出る事はこれからも無い職種、それが鈑金塗装工場です。

2025年、既に需給バランスが崩れている地域が出てきています。
弊社も含め人材不足から納期が長引く工場が増えてきておりますが、このまま需要が供給を上回り続けると、需給バランスを金額で保つ工場が出てきても不思議ではありません。いわゆるファストパスのような、優先修理権です。

安価に修理をする工場によるCMも増えてきており、工場の二極化、つまり設備投資をして仕上がりと品質を確保し保険修理案件が多い工場と、ご実費や中古車仕上げ向けに削ぐべき作業を削ぎ落す工場に分かれていくでしょう。

保険会社が板金塗装工場に適切な料金を支払わないと、悪事を働く工場が出てくるでしょう。
そういった工場しか生き残れないという世の中には、したくないものです。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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