鈑金塗装工場のフロント担当者という仕事

鈑金工場のフロント担当者、通称フロントマンという、外からは分かりにくい仕事について解説していきたいと思います。

  • 修理受付(ヒアリング、打ち合わせ、修理前のご説明、見積書作成など)
  • 保険会社との打ち合わせ(着工前の確認、写真の伝送や見に来る場合の対応など)
  • 着工指示(着工のご確認、初期部品発注、指示書作成、注意点などの現場との打ち合わせなど)
  • 回送(お客様の車がある場所へ引き取りやご納車)
  • 途中連絡(完成前連絡、修理途中の打ち合わせ、部品在庫が無い等のトラブルのご説明など)
  • 完成連絡(完成検査、完成のご連絡と納車日のお打ち合わせなど)
  • 保険会社との協定(見積もり金額の合意など)
  • トラブル発生時の対処(作業漏れ、作業クレーム、部品管理:在庫管理、発注漏れの有無などの確認)

多くの鈑金工場のフロント担当者が、この仕事内容の全部や一部を担っていると思います。

どんな人に向いている仕事なのか

前述の仕事内容から、このような方が向いていると考えられます。

  • コミュニケーション能力がある人
  • 車が好きな人
  • 論理的な話が好きな人
  • マメな人

コミュニケーション能力がある人

鈑金塗装工場のフロント担当者は、自動車販売等の営業と異なり、物を売る商売ではありません。

自動車の修理は、整備も鈑金塗装もサービス業となり、サービス内容に関するご説明が中心となります。
そのため、人と話をするのが苦手な人では、ご説明が上手くできないかもしれません。

車が好きな人

見積もりでは、車に関する知識が(整備士に比べると)少しだけ必要になります。
しかし、それ以上に大事なのは「どこまで損傷が及んでいると考えられるのか」と、「それを導き出すための自己状況」が分かるかどうかです。
事故に関わる車の知識は整備やカスタムと比べても特殊であるため、車が好きな人であれば覚えやすい、という程度で良いかと思います。

論理的な話が好きな人

また、保険会社との協定では、論理的な話をする場合もあります。
例えば、前にエンジンを乗せた車が走行中にブレーキを踏むとノーズダイブ(前側が下がる)が発生し、追突事故であれば、ブレーキを踏んでいたかいなかったかが分かる、といった具合です。
その事故に起因するキズや凹みがどこなのか、何時方向から時速何キロメートルでノンブレーキだとどこまで損傷があると考えられ、実際にどこまで損傷があるのか。どこまで損害が波及していると考えられるのか、それによってどのような機器の破損や不具合が発生する可能性があるのか、又は無いのか。
これに関しては、保険会社のアジャスターと打ち合わせをしていくのですが、通常は裁判での証拠にも関わる内容となるため、アジャスター主導で話をしていきます。しかし、アジャスターは保険会社の社員や外注業者であるため、比較的保険会社寄りの考え方をします。つまり、「損害があると言われなければ、それは損害ではない」と判断する場合もあります。
(※損害の立証は被害者側にあるため、特に被害車両については被害者側の立場の人間が損害を立証していく必要があります)
事故については素人であると言えるカーオーナーの皆さまに代わり、鈑金塗装工場のフロントマンが損害の大きさをアジャスターに説明する事が多くなります。
(※鈑金塗装工場はカーオーナーの代理人ではないため、鈑金塗装工場がお客様に代わり直接請求する権利は無く、あくまで損害の立証をプロとしてお手伝いしているという立場と考えられます)

マメな人

最後に、マメな人に関してですが、フロントマンはどうしても電話や来客対応が多く、場合によってはお客様や取引先に出向く事も多いため、会社を不在にしたり電話に出られない事が多いです。

パソコンのスキルはそこまで必要とは言えませんが、見積もりシステムや顧客管理システム、又は画像等をやり取りするシステムといったPC上で、可能な限り自身が行った対応の履歴を残したり、分かりやすいように整理しておいたりすることで、不在にしている間でも別の人が分かるようにしておくとよりスムーズに満足度の高い顧客対応が可能と言えます。
これは必須ではないかもしれませんが、マメな人の方が良いスタッフと言えるでしょう。

実際のフロントマンの種類

会社や規模により、下記の3つの担当を全て兼任、一部兼任という場合が考えられます。

  • 洗車担当(フロントマンと言えないかもしれませんが、主な業務は洗車)
  • 回送担当(主な業務は運転、顧客との話は損害確認程度の場合もあり)
  • 見積もり担当(初期概算見積もり、保険会社との協定業務等)

洗車担当は、洗車業務がメインで、回送担当と兼任している事も多いかと思います。回送担当は、主な業務が運転で、お客様と損害箇所を確認したり、作業完了後の納車時に仕上がりを確認してもらう程度の場合もあると思います。見積もり担当は、最初の状態で見積もりを作成し、その後実際の作業内容に基づいて請求書を作成、又は保険会社と請求金額を確定していく協定の業務を行うのが主な業務となります。上記に加え、時間が余れば自社サイトの更新やSNS・口コミ返信等を行う場合もあれば、中古車の販売や買取といった業務にも携わるケースがあると思います。

まとめ

鈑金塗装工場のフロントは、現場(鈑金スタッフ・塗装スタッフ・整備スタッフ)に比べると求人数も少ない場合が多いかと思います。
車に携わる仕事の中では資格も不要でハードルも低いという意味で中古車販売の営業マンと比較しやすいかもしれません。物を売る訳ではないものの、見積もりや協定は奥が深く10年経っても一人前と言えるかどうか難しい業界でもあります。
また、会社によっては人手不足などの理由で様々な業務を兼任する場合もあり、残業は月5~10時間程度という工場もあれば、週6日22時~23時まで仕事をしている工場もあると聞きます。
車に携わる仕事がしたいという人の中で、鈑金塗装工場のフロントマンになりたいという人は少ないと思いますが、仕事内容の評価が難しい業務内容ともいえるため、給料に関わる適切な制度を設けているかどうか、残業代はしっかり払われるかどうか等、就業規則をしっかり確認する事をお勧めします。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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