届け!金融庁に!

弊社が加入している団体、BSサミットを通して、国土交通省や金融庁に届く形でアンケート等を送るタイミングもありますが、2025年2月1日現時点ではアンケートを行っていない状況です。
ここで記事にする事で届くとは思っていませんが、問題提起してみたいと思います。

保険会社が(単独で)損害額を決定するのは妥当か

保険会社は、保険金を少なく支払うほど損害率が下がり、保険料を安く抑えられ契約者増につながる収益構造をしています。
短期的に見れば、契約者に対し支払いを渋った方向に”適正化”すれば利益が出ます。
もちろん、「あの保険会社は満足な支払いをしない」と評判が悪くなれば契約者数は減少し、将来的な売上・利益は目減りすると思いますが、短期的に株主に対し還元するのであれば、金融庁に怒られなければこの渋り方はOKという手法を取るでしょう。
(前回の記事、全損による車両引き上げも怒られるべきケースがありますね)

損害額を保険会社が決定する、という言い方は、契約者の了承を得て支払いをしている以上適切では無いかもしれませんが、
「板金塗装工場の指定には第三者機関の認定が必要です」
という保険会社もある中、アジャスターの見積書を損害の見積書の見方も分からなければ名称と部品が一致するはずもない顧客に提示し、
「この金額をお支払いしますが、宜しいでしょうか」
という問いでOKが出たら支払う、というのは不払いの温床になるのではないでしょうか。

記事を書くに至った、実際に発生した事例

事故発生後、保険会社の手配した立ち合いアジャスターが損害確認をし、見積書を提示されたお客様が気付きました。
「あれもこれも見積書に入っていない」
とはいえ、保険会社もプロのはずです。経験の浅いアジャスターだったのかもしれませんが、それであればなおさら社内でのチェックを通して契約者に届いていると想定されます。
お客様はお仕事柄もあり、見積書の内容や損害額の算出方法が妥当ではないと判断され、弊社にご依頼をいただきました。

私が見積書とお写真から確認した結果、誰が見ても一目(又は写真1枚)で分かる損害が抜けていたり、お客様ご申告のボンネットの開閉で生じる違和感に関わる損害について計上されていなかったり、塗装一式での記載で塗装内容が明確でない(これは良くある話で、別途取り寄せないと出ないケースがほとんど)など、万が一”わざと安価な見積りを作成しているのであれば”不払いではないか、と考えられるような見積書である事が分かりました。

この事例1件での”想定不払い額”と、この責任

アジャスター見積りが200万円前後、弊社の見積りが、実際に車両を見ていなくても300-350万円前後と想定しています。

あえてアジャスターの好きな無根拠の「間を取る」という方法を2回使い、325万円と200万円の間を取れば、今回の想定不払い額は安く見て62.5万円、高く見て150万円です。

恐らく、この見積書に対し、契約者であるお客様がOKを出していたらそのまま通っていたでしょう。
万が一、保険会社の社内チェックが「支払額確定の後」であった場合、この見積書を作成したアジャスターはどのような責任を取るのか、想像してみます
(記事を書いている佐野は、保険会社勤務経験がございませんので、これが真実というわけではありません

上席「この内容のまま社内に保管をしておくわけにはいかない。金額は顧客の同意を得ているから、内容は適切なものに書き換えておけ。」
アジャスター「すぐに取りかかります!(バンパー取替が抜けていたから、部品代をそのままフレーム修正の工賃から引いておくか)」
こんなやり取りがされている想像をしています。
ボーナスの評価などにマイナス査定はされるかもしれませんが、
まさか”支払額を安く抑えたので”プラス査定という事は無いと思います。

無いですよね。現役、または退職したアジャスターさんの感想をお待ちしております。

まとめ:契約者が了承している以上OKなら、金融庁が動かなければ保険会社は変わらない

保険会社と契約者では損害見積りに対する知識と経験に差があるため、
「プロである保険会社が契約者を騙すような真似はしないだろうし、見積書はきっと誰が見ても適正で、この保険金額でほとんどの修理工場が修理依頼を受け付けてくれるだろう」と考えるのが普通だと思いまし、それが理想の支払いというものです。
今回のように、見積りのプロである板金塗装工場にご依頼が一つの解決法となります。
しかし、保険会社を疑うところからスタートした上で、時間も手間もある程度の費用もかかるため、全ての方がこの解決法を選択できる訳でもありません。

ディーラーや板金塗装工場の多くはノウハウが無く、こういったご相談に対応していないか、はたまた適正な料金設定が分からないのか、動いてくれても高額な費用を請求している場合がございます。
(私の耳に入った例では、「本来修理していればあった利益を貰いたいと考えているのかな」と思えるぐらいの金額でした)

保険会社は金融庁から言われないと辞めないと思いますので、次の機会に声をあげてみたいと思います。
ある保険会社は「(支払いが適正になされたら)保険料が高くなってしまう」という危惧をしていた事もあるようです。
事故があった時のための保険なのに、事故があった契約者を犠牲にして保険料を抑えているのが実情だとすると・・・
保険会社のあるべき姿が問われる時代になりました。

ご意見、ご感想はメール、又はLINEでいただけると幸いです。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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