昨今の自動車保険については、いつの間に追加された約款の内容により、
「それは契約者を馬鹿にしすぎ」
という内容が増えています。

その一つが、「全損になったらアナタの車を代位取得します!」というものです。

代位取得自体は、一応理にかなっている(気がする)

車両保険金を200万円かけているとして、200万円以上となる修理費の事故を起こしてしまった。
200万円を支払ってあなたの車を買い取ります、というのが、昨今の自動車保険会社の約款です。

そんな事昔はなかった、というお気持ちは分かりますが、昔はそのような契約内容ではなかったのです。
しかし、この改変(改悪)によって保険会社は株主に対して収益を還元しているのですね。

車を引き上げて欲しくない、まだ乗りたい場合は?

全損といっても、多種多様な損害がございますので、
何も直さなくてもそのまま乗る事が出来る場合や、
先の例でいえば100万円かければ通常走行に支障がない場合もあります。

まだ乗りたい!という場合、保険会社に対して「買取費用」を支払う事になるのです。

「なぜ自分の車なのに、全損で保険金を請求すると自分の車ではなくなるのか・・・
その分の車両保険金を支払ってきたのに・・・」

と思うかもしれませんが、その約款の内容で契約したのは、契約者です。
確認しないで契約したのだとしたら、それは契約者に落ち度がある、というものです。
代理店がきちんと説明してくれなかった、と言いたい気持ちも分かりますが、それでも契約したのは契約者なので、ボデーショップ佐野は守れる立場にはありませんが、問題点はそこではありません。

中古車相場が上がると、契約者が保険会社に払う買取価格が上昇する

コロナ前よりコロナ過で中古車相場が上がり、落ち着いたとは言え車種によっては高騰しています。

例えば、先の例で車両保険金が200万円、全損になると一時金で20万円貰えるので220万円、
まだ乗りたい!と保険会社に伝えたら、
「この状態でも中古車相場が60万円あるので、60万円を差し引きまして、160万円のお支払いになります。」

もちろん、これは一例なので、20万円という(一時金の中でおさまる、良心的な)保険会社もあれば、80万円、プレミアがついていて100万円、海外需要が高く円安もあり200万円という場合も考えられるでしょう。

誰が、なんのために車両保険金を支払っているのか

正確にいつ頃というエビデンスではなく恐縮ですが、ある検索ワードで出てくる環境省が損保に行ったヒアリングによると、車両保険の7-8%が全損だそうです。

私、佐野の大好きな「自動車保険の概況」の2023年のP.128、2022年度車両保険支払い件数のデータによれば、2,151,062件、つまり215万件の車両保険支払いがございました。
つまり、15万件近い全損車両があり、多くの方が保険会社に引き上げられていると考えられます。

しかし、先の例であれば190万円分損の損害であれば引き上げず、車両も残るのに、200万円を超えたら引き上げない事を選択すると実際に支払われるのは数十万円引かれる場合もある、というのはおかしな話です。

まとめ:BM問題の次は、これかもしれない

被害事故の相手にめちゃくちゃ強気に出る保険会社問題が先か、
全損時の保険会社への買取費用問題が先か、
とにかくこの業界にはまだまだ大きな問題が潜んでいます。

声を上げる人が少ないのか、声をあげる場所が無いのか、
はたまた声を上げられると困る人がロビー活動をしているのか分かりませんが、
このような問題があると、車両保険はリスクしかなく、最終的には契約者が減少するのではないでしょうか。

ちなみに、保険会社によって約款はまちまちなのですが、ある損保の車両保険の欄には「分損の場合でも、分損で支払った分の割合分権利を取得します」的な事が書かれている場合もございます。
「分損で買替を行う場合、車両を引き上げて支払った割合分保険会社に所有権があるので、車両所有者は満額貰えないぞ」という意味なのでしょうか・・・
私はいままでこの内容が適用されるのを見た事はありませんが、いつかトラブルになる文言のように見えます。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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