全塗装は10年持つ?鈑金工場がお勧めする全塗装の進め方

こちらの記事は、鈑金塗装ガイド寄稿した記事を転載したものとなります。

全塗装を行いたい、又は行う予定がある方向けの記事となっております。
結論から言うと、屋根の無い屋外で10年の対候性を持つ全塗装を行おうとすると、その予算は軽自動車でも60万円を超える可能性があります。色や状態によっては100万円と言う事もあり得ます。
どんなに予算をかけて努力をしたとしても、紫外線の影響を受けやすいボンネットや屋根は、10年持たない場合もあります。

失敗する全塗装、つまりクレームになる全塗装を避けるには、仕上がりイメージの合致が重要です。
全塗装の依頼は出来れば受けたくない、トラブルを防止する全塗装の依頼の受け方という意味では、鈑金工場等のフロントの方向けの記事にもなっております。

なぜ全塗装するのか、を明確にしておく

多くの場合は、「塗装が劣化してきたので」という理由ですが、それだけではない場合もあると思います。

  • 塗装の劣化が全体的にみられるようになった
  • キズや凹みの範囲が広く、どうせなら全塗装したい
  • 単純に色を変えたい(気分を変えたい)
  • この車種には無い色にしてほしい(オリジナリティを追求したい)

といったところでしょうか。
なぜ全塗装をするのか、仕上がりのイメージがどうであるのか、という事を伝え、それに応えてくれるところに依頼をした方が良いと思います。

何に拘っているか、何が大事で全塗装するかを必ず伝える

拘りによって、どのように全塗装を進めていくべきかが変わります。
以下は一例ですが、複数の拘りがあれば、それを伝えた方が全塗装後のトラブルは避けられると思います。

  • 予算重視の例:「60万円が上限です」
  • 仕上がり重視の例:「手間と予算が多少かかっても、良い仕事をしてほしいです」
  • 長く乗る予定の例:「錆びがある場合、予算は上乗せできるのでしっかり処理してください」
  • リスクの無い作業方法の例:「オリジナルパーツである事を重視したいので、部品交換が発生しない作業方法でお願いしたいです」

あくまで一例ですので、全塗装をしたい方にはそれぞれの拘りがあると思いますが、
「拘らないから40万円で全塗装してくれ!」という完全予算重視の方もいらっしゃると思います。
金額内で工場にお任せ、という方法ですと、後から「こんな仕上がりじゃ受け取れない」「40万円でそこまで出来るはずがないがないから仕方がない」というトラブルの元になる可能性があります。
(予算が相場よりはるかに潤沢であれば、その限りでは無いかもしれません)
特に色を変える全塗装の場合、様々な部品を外した方が仕上がりは良くなりますが、外して取り付けるための工賃や、外すと壊れる部品、再使用により変形してしまう部品もあります。

予算を削るという事は、例えば「色を変えるのに表面しか塗装しない」(運転席等のドアを開けると、裏側は元の色)といった全塗装メニューを提供している店舗もあれば、「全塗装はボンネットの裏まで全部塗るのか、エンジン周辺部はどこまで塗るのか」といった細かい打ち合わせを行う店舗もあります。

いずれにしても、何に拘るのかによってかかる予算も変わってきますので、打ち合わせに取れる時間が少ない場合でも、「予算感」「許容できること、できないこと」だけは伝えていくべきだと思います。

なぜ金額が大きく違うのか?を考える

全塗装は、その工場の提案力や出来る事の差が大きく出るので、金額の算出の方法が大きく出ます。
例えば、どんな状態かを見ずに、ニーズや拘りを確認せずに、一律の金額で全塗装を行う店舗に相談したとします。
実際の状態を見て、ここは直すのかそのままなのか、ここはこういうリスクがあるが許容できるのか、ここまではこの金額で出来るがここは別料金になる、という説明があれば、ニーズや拘りの確認が出来ていると思いますが、何も見ずに「大丈夫!この金額でやります!任せてください!」というのは、拘りがなければ問題ありませんが、拘りがある場合はトラブルの元になりやすいと思われます。

全塗装の金額は、主に下記の内訳となっております。

  • 分解工賃
  • 鈑金工賃
  • 塗装工賃
  • 塗装材料費
  • 分解時破損部品や、同時交換をお勧めする部品代

そして、相談先によって大きく異なるのは、分解や鈑金、塗装をどこまで行うのかという工賃(=手間)の部分と、安価な塗装材料なのか・比較的高価(高機能)な塗装材料なのか、というところです。
純正新品部品であれば全国同一価格だと考えられますので、仕上がりを重視するとこの部品は交換です、という打ち合わせの結果金額が高くなっていく事も考えられます。

安価な全塗装のメリット・デメリット

安価に全塗装を行う場合、分解は最低限、鈑金も最低限、塗装は可能な限り手間を省きゴミやブツがついても取らない、磨きは行わない、塗装材料は安価な物を使う、破損の可能性のある部品は全てマスキングするので部品交換も無い、という作業の進め方を行います。

メリットは当然安価である事ですが、分解や部品交換が最低限であるため、納期も短いです。
大体、1~2週間程度で終わらせてしまう事が多いと思いますが、金額から逆算すると手間をかけずに素早く終わらせなければ割に合わないという事になると思います。

デメリットとしては、仕上がりに影響する手間も省いている事になります。
そのため、以下のような部分で仕上がりが悪くなっている可能性があります

  • 分解をしていないので、マスキング痕が分かる、又は目立つ
  • マスキングが充分にされておらず、塗装のミストが部品に付着している
  • 特に色を変える場合、元の色が見える部分がある、又は多い
  • 凹みやキズがそのままで塗装されている、又は鈑金痕が目立つ
  • 特に年式が古い場合、錆もそのままで塗装しており錆がすぐに出てくる
  • 塗装内に入っているゴミやブツが多い
  • 塗装のタレなどが多い、又は染まりが悪い部分がある
  • 塗装の耐久性が悪い(劣化が早い)

安価な全塗装では、見る人が見れば一目で安価に全塗装した事が分かります。
予算が決まっており、予算内でしか仕上げたくない!という人が気分で色を変えるといったニーズや、後2-3年しか乗らないからお金をかけてしっかり全塗装する必要もない、というニーズもありますので、安価な全塗装をすべきではない、という訳ではありません。

しかし、例えば「仕上がりが悪いから直してくれ」といってもこのやり方でしか出来ない工場という可能性もあります。追加でお金を払っても、その工場の仕上がりの限界である事も考えられるため、やり直してもほとんど変わらないという場合もあります。
ここから他の工場に依頼したとしても、ここまでの全塗装費用は無駄になるどころか、全塗装前の状態より費用がかかるという事も考えられます。

予算をかけた全塗装のメリット・デメリット

単純に、安価な全塗装と比べ、仕上がりに影響する手間のかかる作業を追加すればするほど予算が必要となり、前述のデメリットを消していける事となります。

メリットは、前述のデメリットをほぼゼロに近い状態まで持っていける事です。
塗装の材料も良い物を使っている可能性が高くなりますので、塗装する色によってはこれも仕上がりに影響します。
拘る方は、高機能塗装と呼ばれる対擦り傷性のクリアーにて全塗装を依頼される場合もあると思いますが、こちらは取り扱っていない工場もあります。
ちなみに、ボデーショップ佐野では、対擦り傷性クリアーでの全塗装も対応可能です。

デメリットは、お金がかかる事と納期が長くなる事となります。
加えて、打ち合わせをする項目も多いため、全塗装に取り掛かるまでに時間がかかる事も挙げられます。例えば、拘りを持っている方と詳細な作業の打ち合わせをしていくと、1時間や2時間では済まない事も考えられます。

予算が潤沢であればあるほど、まるでその色の新車が存在するかのような仕上がりとなります。
塗装の耐久性も高くなるため、10年乗る予定という方は予算をかけるべきです。
ただし、元々修理した箇所がある場合や以前に全塗装をした事がある車両ですと、塗装トラブルが起きた時に責任の所在が難しくなります。これについては、トラブルを避けるために事前に伝えておき、どのような作業方法によりリスクを回避できるのか打ち合わせをした方が良いと思います。

まとめ:失敗しないために、許容できない部分を伝えよう

どこまでの仕上がりの不備やリスクを許容できるかは人それぞれです。
予算が限られていれば出来る事も限られるので、許容できない部分があればそれだけでも伝えておきましょう。
作業してみないと分からない事もありますので、特に予算をかけられる全塗装の場合、作業中の打ち合わせ回数も増える可能性があります。
決して安くない全塗装です。しっかりと打ち合わせができる環境のお店に依頼をした方が、トラブルが少ないと考えられます。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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