免責金額が返ってくるのに、先に修理工場に支払う事について

弊社にアクセスするキッカケの一つに、「免責金額 返ってくる」というワードで検索される方がいらっしゃいます。
なぜ免責金額が戻ってくるのかについては、保険会社の説明に勝るものは無いはずですし、他のサイトでも詳しく書いてあると思います。
しかし、なぜ工場に先に支払うのか、戻ってくるなら支払わなくてもいいのでは、という部分について詳しく書いている記事はあまりなさそうでしたので、鈑金塗装工場の目線で解説していきたいと思います。

なぜ戻ってくるのに鈑金工場に免責金額を支払う必要があるのか

「返ってくるのであれば、なぜ支払うのか」と言う事を疑問に思われるかもしれません。

自動車修理工場は、立場としては修理を依頼するエンドユーザー様との修理契約に基づいて修理をしているため、修理金額全額を修理前、又は修理後のご納車時に受け取る権利があります。
(保険会社と修理工場が修理契約を締結している訳では無いため、本来は修理代を納車時に受け取り、支払った修理代を保険会社から受け取るという流れになります。しかし、現在ではお金の流れを簡略化し、事故当時者の方に立て替えていただく手間を省くために保険会社から修理工場に支払うのが一般的です。)

そのため、工場によっては修理完了後に免責金額だけではなく、修理代全額をお支払いいただく必要がある、とご説明をする場合もあります。
これはがめついのではなく、後述の遅延損害金を発生させないため、又は回収困難というリスクを減らすためだと考えられます。

修理代の請求が発生するタイミングは、ご納車時であり示談時ではないと考えると分かりやすいかもしれません。

では、免責を支払わず、示談が終わらないと保険金(修理代)が工場に支払われない場合、どのような事態になると考えられるでしょうか。

遅延損害金が発生する可能性がある

例えば、免責金額をご納車時点でお支払いいただけず、示談から支払いまで365日経過したとします。
売上の回収に時間がかかる場合、工場側には、遅延損害金を請求する権利が発生します。
(義務ではありませんので、遅延損害金を請求している事は少ないかもしれません)

2022年7月現在、遅延損害金は5%請求する事ができますので、50,000円の免責金額なら5%、250円を請求する権利が発生します。
もちろん、それまでに修理代が支払われていなければ、仮に免責金額も合算して100万円の場合、5万円を請求する権利が工場側に発生します。
保険会社は、既に示談が完了している件について、その合意金額より多く工場側に支払う事を良い事とは思いません。
免責金額の支払いを拒否されるケースが少ないため、免責金額の遅延損害金を誰が負担するのかについては分かりかねます。
免責金額を先に支払いたくないという場合は、遅延損害金が発生した場合誰が負担するのかを確認した方がデメリットは少なくなると思います。

そもそもなぜ免責金額が返ってくるのか

免責金額が返ってくるのは、相手のある事故で、相手の過失がある時になります。
相手の過失が100%であれば、自身の車両保険を使う事は無いと思います。
自信の過失が100%であれば、免責金額は返ってきません。
契約内容によるかもしれませんが、通常、免責金額が先に充当されます

相手から支払われる過失分の金額が免責金額を超えていれば、免責金額から先に支払われるため、支払った免責金額を受け取る権利があります。

免責金額をなぜ工場側に支払うのか

前述の通り、修理の契約はお客様と修理工場で締結をしているため、修理代を工場に支払うという本来の流れを免責金額だけ踏襲しているという事となります。
ご納車時等に修理工場に免責金額をお支払いするメリットとしては、相手の過失分で支払われる金額が免責金額全てを賄われるものでない場合、支払いにかかるコスト(来店、又は振込手数料等)を削減できる点にあります。
請求額から振込手数料を勝手に差し引いてしまうと、修理工場の決算書に売掛金(未収金)の

万が一保険の内容や保険料のお支払いに不備がある場合や、保険金詐欺又は詐欺未遂が発覚した場合、保険を使える予定が使えない、という事にもなりかねません。
通常、修理完了前に発覚する事がほとんどかとは思いますが、免責金額だけでも先に支払ってもらう事で、逃げられてしまい全額回収不能という事を防いでいるのかもしれません。

過去に弊社でも発生した事例としては、「車両保険加入後すぐに事故報告があり、事故報告に矛盾点があったため監視カメラの映像等を調べたところ、実際の事故日は車両保険加入前であったため、車両保険が支払われなくなった」というものがあります。
修理中に発覚したため、正確な修理金額をお伝えし、納車時にお支払いいただきました。

もしご納車後に発覚し、保険会社からも支払われない、お客様とも連絡が取れない、という事となると、回収不能となってしまいます。
免責金額だけでも回収できていれば、修理金額によってはあきらめがつくかもしれません。

その他の都合も考えられる

あくまで私個人の推測ではありますが、保険会社としてはこちらの考えもゼロではないかもしれません。

  • 事故の早期解決を促すために一度自己負担をしてもらう
  • 後から出てきた証拠で過失割合が逆転する可能性を考慮している

事故内容によっては、車が直ってしまい、過失割合によって自己負担額もゼロになるからと、事故の解決を後回しにする方もいらっしゃいます。
しかし、保険会社としては事故の早期解決は大きな課題であり、素早く事故が解決する事で高い顧客満足度を維持できているという保険会社もございます。

免責金額を一度お支払いしていただく事で、「事故が解決・示談に至らないと立て替えたお金が戻ってこない」という状況を作り出す事で、事故の早期解決に繋がるという考えや統計があっても不思議ではありません。

また、後から出てきた証拠により過失割合が逆転してしまい、免責金額の負担が実質無くなる過失割合の予定が、全額自己負担になるといった事も考えられます。
この場合、保険会社はあくまで現時点での過失の場合での説明をしただけなので、「俺は免責金額が返ってくると聞いていたんだから支払わない。返ってくると言った保険会社が支払え」と言われても、修理工場からお客様への債権(免責金額の請求権)が消えるわけではありません。
(保険契約の約款上、それを保険会社が支払う義務はないため、支払いません)

まとめ

事故修理・鈑金塗装を依頼する場合、その工場に本格塗装ブースがあるかどうかは重要です。
簡易塗装ブースで構築できる塗装環境は、過大評価をしたとして、塗装直後の仕上がりにおいては本格ブースと遜色無い状態まで持って行く事が可能です。しかし、本格塗装ブースを超える事はありません。
塗装環境を一定に保つ事が可能な本格塗装ブースでは、塗装条件を一つ覚えれば概ね対応可能だと考えられます。
外気(工場内気温・湿度等)の影響を受けやすい簡易塗装ブースでは、塗料メーカーの設定する塗装環境による調色や塗装に関する条件を複数記憶、又は記載しておき、それに合わせて作業を進める必要が出ます。
しかし、簡易塗装ブースで良いと考えている工場が、塗装作業においてメーカーの設定する条件に合わせて塗装しているかというと、その可能性は低く、塗装の劣化が早くなる要因の一つとも考えられるでしょう。
簡易塗装ブースを使っている工場は、設備費の安さから料金の安さを売りにしている場合が多いです。次の車検で乗り換えるという場合以外は金額のみで選ぶと後悔するかもしれません。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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