補修塗装とは、新車時の塗装ではなく、その後に塗装された塗装の事を指しています。補修塗装は新車時の塗装と工程も異なり、ほとんどの場合塗装材料も異なります。今回は、補修塗装の劣化がなぜ起こるのか記載していきます。
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この劣化している部分は、ドアの上部(ドアガラス、バイザーの上)になります。弊社で作業した箇所ではないので、何年経過しているかは分かりませんが、作業工程にミスがあれば2-3年以内に起きる場合もあるようです。
新車時の塗装の経年劣化は、クリアー塗装が紫外線によるものや、鳥などの糞、鉄粉等といった直接何かが触れた影響により劣化したものとなります。紫外線の影響としては、保管状況や日当たり、色にもよりますが、新車時の塗装でも8年~15年程度でルーフパネルのクリアー塗装は劣化し始めます。
しかし、新車より後に塗装された補修塗装が、ドアの上というルーフに近い部分で先に劣化している、というのが今回の画像となります。
新車時の塗装は、樹脂パーツを除き機械が電着塗装で行うものがほとんどです。しかし、補修塗装は人の手で行います。そのため、劣化の早さは「作業工程に問題は無いか」「塗料メーカーが定めている塗装条件(前提条件・気温や湿度等)における塗装材料の作成比率が間違っていないか」という要素が大きく関わってきます。また、塗装の劣化とは直接関係ありませんが、塗装の前の状態である鉄板、鈑金パテも塗装下地として耐久性に関係する場合があります。
塗装の工程は、大きく分けて以下のようになります。
各工程で、気温や湿度によって調合(材料を混ぜる比率)が変わるものもあれば、乾燥時間や塗装工程内で次の工程に移るまでの制限時間が変わる作業もあります。
安定した塗装環境を構築するために、本格塗装ブース(箱の中で熱をかけて、塗装環境や乾燥環境を整える設備)が必要となります。
しかし、この設備は工事費を含めると数百万円~1,000万円近くになることから、ある程度の規模が無いと簡易塗装ブースと呼ばれるタイプの設備で塗装している事も考えられます。
簡易塗装ブースでも塗装作業を行う事は可能ですが、安定した塗装環境の構築は本格ブースの方に分があります。また、塗装にゴミ・ブツ・チリがより付着しにくいのも本格塗装ブースです。塗装にゴミ・ブツ・チリが多い仕上がりの場合、簡易塗装ブース又はそれすらもなく、塗装後に付着したゴミ・ブツ・チリを取り除く作業も行っていないと考えられます。(通常、本格塗装ブースであれば数えるほどのゴミ・ブツ・チリしか付着しませんが、簡易塗装ブースで清掃等も怠っている場合、取り除ききれない量のゴミ・ブツ・チリが付着する可能性があります)
費用が安ければ、そういった手間を省いてお安くしている場合も考えられますので、これが悪いわけではありません。作業レベルに合わせた費用を請求しているとしても、その事前説明を怠っている事が問題となります。お客様との仕上がりイメージが合致せず、なぜ安くできるのか、料金の高い工場と何が違うのかを事前に説明していれば、安くて仕上がりがそれなりなのは、悪い事ではありません。同じように仕上がり、同じような耐久性・対候性があるような言い方をしているために、トラブルが発生しやすくなっています。
事故修理・鈑金塗装を依頼する場合、その工場に本格塗装ブースがあるかどうかは重要です。簡易塗装ブースで構築できる塗装環境は、過大評価をしたとして、塗装直後の仕上がりにおいては本格ブースと遜色無い状態まで持って行く事が可能です。しかし、本格塗装ブースを超える事はありません。塗装環境を一定に保つ事が可能な本格塗装ブースでは、塗装条件を一つ覚えれば概ね対応可能だと考えられます。外気(工場内気温・湿度等)の影響を受けやすい簡易塗装ブースでは、塗料メーカーの設定する塗装環境による調色や塗装に関する条件を複数記憶、又は記載しておき、それに合わせて作業を進める必要が出ます。しかし、簡易塗装ブースで良いと考えている工場が、塗装作業においてメーカーの設定する条件に合わせて塗装しているかというと、その可能性は低く、塗装の劣化が早くなる要因の一つとも考えられるでしょう。簡易塗装ブースを使っている工場は、設備費の安さから料金の安さを売りにしている場合が多いです。次の車検で乗り換えるという場合以外は金額のみで選ぶと後悔するかもしれません。
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