車両保険の免責と等級から考える修理方法

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コラム-ブログ
  • そもそも免責が何か分からない
  • 自動車保険の契約で、免責をつけようか悩んでいる
  • 免責0の契約にしようと考えている

以上のような方の参考になればと思います。
また、免責は戻ってくる、返ってくると言われたけど意味が良く分からない、という方向けの記事も作成しました。

そもそも免責金額とは何か?

簡単に言うと、「支払われる保険金から引かれる金額(自己負担額)」となります。

インターネットや電話で自動車保険を契約する方もいらっしゃいますが、実際に保険を使うタイミングで、
「免責金額って何?」
「どうして保険を使うのにお金を払わなければいけないの?」
という疑問が出る場合があります。

それでは、保険会社がどう説明しているか、見てみましょう。(各損保の解説ページに飛びます)
・ソニー損保の免責金額の説明
・SBI損保の免責金額の説明
・チューリッヒの免責金額の説明
3つくらいあれば、分かりやすい説明にあたるかと思います。

SBI損保さんが分かりやすく詳細ですが、ソニー損保さんは4コマ漫画で見やすいですね。
チューリッヒさんは割と商品説明っぽい感じです。読みやすいものをご確認ください。

お得な免責金額の設定方法を書いている保険会社があればと思いましたが、書いてありませんね。

免責関係の良くあるトラブル:免責金額なんて知らなかった!支払いたくない!

稀に「保険会社に余分に請求して、10万円の免責をまけてよ」と言ってくるお客様がいらっしゃいます。
これは、保険金詐欺をするから手伝え、と言っている事になります。
お客様を犯罪者にしたい工場は保険金詐欺の幇助をするかもしれませんが、ボデーショップ佐野では断らせていただきます。

しかし、そんな事をわざわざしなくても、実際の修理方法を変更する事で一部ご返金する事も可能です。
最も分かりやすい例として、ホイールにキズがついているが気にならない場合、ホイールのキズを我慢するので、ホイール代を浮かせる、という物になります。

こういったご提案を出来る鈑金塗装工場や、ディーラー・整備工場がお近くにあると良いですね。

免責をつけるとお得なのか?

完全にケースバイケースです。
そのため、データを見ていきたいと思います。

前述のSBI損保さんのサイトを引用して説明しましょう。

免責金額(自己負担額)のパターン保険料(保険期間1年、一括払)
35歳 17等級
(事故有係数適用年数0年)
40歳 20等級
(事故有係数適用年数0年)
10-10万円

31,570円

23,560円

5-10万円

34,550円

25,800円

5(車対車免0)-10万円

35,890円

26,810円

0-10万円

38,390円

28,690円

※保険料算出の元となるデータはSBI損保さんのサイトでご確認ください

免責金額というのは、簡単に言うと”保険を使う時の自己負担額”となり、免責10万円であれば「100万円の保険金が入る案件ですが、その内10万円はご自身でお支払いください」となります。

「保険会社に払うの?どうやって?次回の保険料支払う時に払うの?」と思いますよね。
基本的にはディーラーや修理工場などの修理依頼先に支払います。
(車両保険、対物保険の免責の場合)

さて、私が自動車業界に入った2005年くらいでは、保険を使うような事故は10年に1度と聞かされました。(本当かどうかは知りません)
SBI損保さんの上の表で考えると、免責が0-10の場合と10-10の場合では、35歳の例で年間6,820円、40歳の例で5,130円の差となります。
仮に10年に1度保険を使うと考えると、10年間で10万円の差はありません。
つまり、統計的にはあまり得をしない感じがしますね。

上の例は、SBI損保さんが保険料の安さを見せたいので、等級が高い(事故をあまり起こさない)方で算出しています。

では、新規契約の場合はどれくらいの保険料でしょうか。

ここで新規契約の参考金額が分かりやすい、チューリッヒさんの例を見てみましょう。
(ページの中央あたりに40歳の新規契約例があります)

安いですね!車両保険がついて年間5万円台前半。インターネット割引って毎年使えるんでしょうか。
しかも、安く見せるために一番安いパターンで作ったもの、ではなさそうです。
免ゼロ特約無し、つまり免責10-10ですね。1回目の事故から免責10万円です。

以上からも分かるように、免責をつけるのは、割引効果が大きく、保険料の上昇を考えると少額の事故で保険を使わない選択肢となる、低い等級の時がお勧めです。
(そもそもチューリッヒさんでは、7等級からでないと免責ゼロ特約が使えないようです)

保険を使うべきかどうか分からないときには

一般的な内容ですと、自動車保険の使用で等級が3等級下がります。
事故有り等級という割引率となり、1年間の保険料が4~5万円ほど上がる場合が多いと思います。
つまり、3年間で元の保険料と同じ等級になるまでに、おおよそ15万円かかります
(実際にどのような保険料の上昇になるかなど、細かい契約内容は保険会社や代理店にお問合せください)
ここで、保険会社は免責がなければ「15万円が一つの保険使用の目安となります」と言う場合があります。
(免責10万円なら25万円ですね)

よく考えれば、そんな訳ないです!

損益分岐点が15万円のような言い方ですが、機会損失的な考え方だと変わります。
現在6等級で、もし保険を使わなければ、翌年は7等級、保険を使えば3等級ダウンで4等級だとします。
ノンフリート等級別料率制度(つまり、契約台数が10台未満の方の保険契約)では、20等級になるまで保険料は毎年下がり続けます。(等級が上がると割引率が上がります)
つまり、6等級で保険を使うという事は、この先20等級になるまでずーーっと保険料は上がったままだと言えます
最低でも14年はかかります。
14年間上がりっぱなしの保険料ですから、当然大損です。

 

車両保険の支払いデータから見る、保険使用の判断

損害保険料率算出機構統計集
https://www.giroj.or.jp/publication/statistics/
この2018年の統計によれば、自家用車の車両保険支払い保険金を車両保険使用件数で割ると、普通車+小型車で35.5万円になります。
私の数字の読み方が間違えてなければ、平均的な保険を使用する事故では35.5万円の損害額となっている、という事ですね。
それ以下で保険を使う事、また、そもそも車両保険が35万円以下でついている場合は、統計的・平均的には損をしているかもしれません。
(もちろん、1回の保険修理で100万円以上払う事もありますので、実際には25-35万円が多いかもしれません)

私がお客様に感謝される話の一つ、免責の設定方法と等級から考える保険使用をご紹介しました。
お客様のカーライフの参考になればと思います。

車両保険を使う場合と使わない場合で、見積もりを変える事が出来る

3年間で上昇する保険料と、修理の見積もり金額がほとんど同じぐらいの時に、
「やっぱり車両保険を使いたくないな」と考えたとします。

それを修理工場に伝えてみると、どういう反応が返ってくるでしょうか。
あまり親切ではない工場だと、面倒くさがっているのが分かるような対応かもしれません。
外注先への確認で数日かかる、という場合はまだ良心的で、そもそも相談にも乗ってもらえない場合があります。

弊社では、「一番気にならないところはどこですか?そこをやらないとこれぐらい安くなります」または、「この部品を再使用又はマスキングで作業すればこれぐらい安くなりますが、こういった部分で仕上がりに影響が出ます」という回答になると思います。

修理方法や、予算によって作業方法の提案が出来る工場が良い工場だと考え、お客様に様々なパターンをご提案できる工場となれるよう、日々勉強しております。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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