完全に板金塗装業界の方に向けた、見積もり時に使用する工数である自研センター指数(以下、指数)に関する記事になっています。
この記事をすべて読み終えるまで15分から20分ほどかかるかもしれません。
埼玉県新座市に工場を構えるボデーショップ佐野では、業界に関する情報を多数記事にしております。
隣接する朝霞市・志木市・和光市・所沢市や、東京都練馬区・西東京市のほか、都内のディーラーを含むお取引先からもご依頼をいただいております。
板金塗装工場の皆様。
2026年1月号のBSR、合理的な見積もり実践を読みましたでしょうか。
私、佐野はBSRのこの部分は見積もり内容よりも見積書講評を読むのが好きなのですが、
今回、右側の「元アジャスターA氏」に記載の指数に関する内容について思うところがあり、記事にしたいと思います。
記事の要約:3つの重要ポイント
- 「指数」というものさしの歪み 現在の事故修理費用の基準である「自研センター指数」は、実作業の時間と乖離しており、現場の板金工・塗装工がどれだけ努力しても「指数通りの時間」では終わらないケースが多いという実態があります。
- 算出根拠の不透明性 指数を算出する側のデータやプロセスは非公開であり、保険会社主導で作られているという構造上の問題があります。これが、修理工場とアジャスターとの間での「根拠なき妥協」を生む要因となっています。
- 業界の健全化への道筋 現在、国がこの指数の妥当性について調査を開始しています。工場側は「指数だから」と盲信するのではなく、指数外の作業も含め根拠を持ち、透明性の高い見積もりを提示する「王道・正道」の姿勢が求められています。
本ブログ記事の著者:佐野について
本ブログ記事は、2025年には板金塗装工場のフロント歴が18年、
一般のお客様、ディーラーや自動車販売店の区別なくカウントすれば、
対応事故案件数はおおよそ1万件を超えています。相談まで含めるともっとあります。
特に国産車においては、多くの案件で指数を使用していますが、
指数外となる場合や、指数の実作業時間では出来ない作業においては、
ミッチェルのASIA車両版工数表(日本未発売のため英語版)を参考にする事があります。
その他、外車ディーラーのお仕事も同業他社の平均より多くいただいている事から、
外車についてはミッチェル以外にも、ディーラー・メーカーの工数表を使用する事があります。
記載の原文(BSR 2026年1月号 P.61 右側下部)
業界を挙げて健全化に向けた改革を進めなくてはならない中、ものさしであるはずの指数を無視し、各社が勝手な我流の作業項目、根拠のない請求が散見されている。そのような中で、本事案はガイドラインに対する前向きな取り組み姿勢を感じ、このような車体整備事業者は顧客から信頼され、完成した車を見た依頼主の笑顔が思い浮かぶような見積書だった。
歪んだものさし
もし指数が健全で、透明性が高い”標準工数”なのであれば、本記事は書いていません。
あまりにも多くの工場から「この時間では作業が出来ない」と言われたために、国が予算を取って調査をすることもありません。
実作業に沿っている可能性のある”我流の作業項目”よりも根拠がある、とする根拠を知りたいものです。
私が指数をものさしに例えるなら「まっすぐではない」し、「1mm幅が均一ではない」もので、「日本では他に幅広い車種に適用できる工数表を得る手段に乏しいため、多くの工場が仕方なく使用している」という状況です。
他に何に例えたら良いでしょうか。
このものさしが歪んでいると考えていない人もいますし、どれぐらい歪んで見えるかどうかは人それぞれですが、ひとまず歪んでいる理由を記載していきます。
指数とは
指数とは | 自研センターをご確認ください。
板金塗装業界の人なら、説明不要ですね。
指数の問題点
事故修理協定「指針」に 自研センターはなんと答えたか!? | マガジンXニュース
この記事にもある通り、これも業界人には説明不要ですが、端的に言えば指数を作っているのは保険会社で、アジャスターは保険会社の従業員、又は下請けです。
私が協定の時にアジャスターから「指数は透明性が高い、指数を無視していると根拠のない請求、指数を使っているからガイドラインに対する前向きな取り組みであり、信頼される見積書を作るために指数を使ってください」ともし言われたら・・・話にならないから上司を出せ、と言います。
(弊社ブログはアジャスターさんも見ていますので、言われた方もいらっしゃるかもしれません)
指数には不要な請求まで含まれており、透明性が高いかと言われると決して高くはありません。
それを無視して顧客の信頼を勝ち取れると考えているのなら不勉強と言わざるを得ないですね。
指数以外を悪者とした場合のデメリット
指数の時間を『絶対的な標準』だと思い込んでいる工場があるとします。
多くの修理工場ではすぐに理解できると思いますが、これは非常に危ういことです。
決められた時間内に作業を収めようとすれば、どうしても工程のどこかを削らざるを得なくなります。
そのシワ寄せは、最終的に「お客様の安全」や「数年後の修理トラブル」となって現れるからです。
保険会社が指数を”ものさし”と自称するのであれば、まずはその算出プロセスの透明性を高めるべきです。
指数以外を”独自の工数”とひとまとめに切り捨てて叩くのではなく、
現場の声に耳を傾け、指数の精度自体を改善する取り組みこそが必要なのではないでしょうか。
指数が不透明な理由
指数を「不透明だ」と言う理由。それは、基準となるデータが一切表に出てこないからです。
- 指数算出の根拠となる「基表」は非公開。
- 実車計測をしているというが、その証拠となるデータや動画も公開されない。
- 「作業の平均値」を謳いながら、最高値・最低値などの統計データすら示されない。
もちろん、指数という仕組み自体が「商品」である以上、
企業秘密に関わる部分は守秘されるべきでしょう。
しかし、本気でその透明性を主張するのであれば、やり方は他にあるはずです。
例えば、他の算出方法(工数)と比較した上で、
「当社の指数は、現場の我流よりもこの点で優れ、透明性が高い」
と堂々と証明するのが、本来あるべき筋ではないでしょうか。
指数が不要な請求をしている(場合がある)理由
- メタリックやパール塗装(ソリッド以外)の場合、指数には隣のパネルを馴染ませる「ボカシ塗装」の時間が含まれています。ルールを厳密に適用するなら、ボカシを行わなかった場合はその分を差し引かなければ「過請求」になります。この事実は、専門誌(BSR 2026年1月号)でも言及されており、佐野自身も自研センターに確認済みです。(アジャスターが黙認しているのは、この時間では作業が出来ないと理解してるからではないでしょうか)
- 少なくとも協定をするアジャスターは前提条件を厳密に運用しておらず、前提条件から考えると不要な請求をしている状況は存在しうる(実質的に多くの車両等が前提条件から外れており、これは他の工数表であっても同様だと考えられるものの、アジャスター側からこの点について加減の話が出る事はまず無い)
- 指数の存在しない輸入車などでは、「形が近い」「セグメントが同じ」という理由で全く別の国産車の指数を無理やり当てはめることがある
もちろん、専門誌の限られた誌面ではこうした「現場の歪み」まで書き切れないでしょう。
しかし、これほどまでに曖昧で、現場の実態から乖離した運用がまかり通っていて、
本当に「一般消費者を笑顔にしている」と言い切れるのでしょうか。
指数の問題点についてBSR本誌が言及するのは国の調査が進んでからだと思いますが、
これでも一般消費者を笑顔にできていると言えるのでしょうか。
指数が依頼主(消費者)を笑顔にすると考えられる(つまり、本来の作業時間に対して安くなる)理由
- 指数の作業時間内では作業が出来ない(ことが多いため、国が調査をする)
- メーカー工数よりも圧倒的に短い作業時間が設定されている(ことが多い)
- 指数は平均値を用いているらしいので、何の平均をとっているかによっては、サービス内容よりも安価となる(仕上がりを重視している作業内容が安くなりやすい・手を抜く方が儲かるという可能性が拭えない)
- 前提条件に”当該作業について知識と経験があり、作業手順・作業方法を理解している者”とある事から、特に珍しい車や珍しい作業に関しては実作業時間よりも指数の方が短い作業で出来る事となる(可能性がある)
確かに安ければ依頼主は笑顔になるかもしれませんが、透明性が高いと言われる指数を使う事で経営危機に陥るのであれば、それは長い目で見たときに依頼主を笑顔にし続けられるのでしょうか。
指数以外の選択肢としてのミッチェル工数表
日本語版は撤退してしまいましたが、私、佐野はミッチェルの方が過剰な請求が無い見積もりが書けると考えておりますし、利害関係を無視すれば、ミッチェルを使用したことがあるアジャスターは同じ事を考えるでしょう。
ミッチェル工数表には、以下のような利点があります。
- ボカシ塗装用の数値があり、1枚単位で計上できる(指数はソリッド以外強制2パネルボカシ)
- 外車も対応(というより、日本語版では外車工数しかない)
- 本前半にある工数使用マニュアルが分かりやすい(指数と比較して)
しかし、以下のような欠点があります。
- 塗装工数は記載数値=時間ではないため、計算式が必要
- 日本語で手に入るのは外車のみ、更に2020年版を最後に翻訳ストップ
- 日本車についてはASIAN工数表(英語)の購入が必要
- ソフトウェア版の契約は日本では基本出来ない
日本でミッチェル工数表が搭載されているソフトウェアが基本的に手に入りませんので、ミッチェルを使うには本の入手と本の適用が必要です。
更にミッチェルの日本車工数表は英語で輸入が必要ですので、物好きしか所持しておりません。
まとめ:指数の問題はすぐに解決しないが、国の調査は始まる
板金塗装工場が我流の工数を使う際、その根拠をしっかり持ち、指数に対して我流工数を使う理由をしっかり持っていれば、アジャスターに何を言われても説明が出来るはずです。
「その方が儲かるから、根拠も論理もなく独自に設定した工数を使う」
という事をしていると、痛いしっぺ返しがくるのではないでしょうか。
弊社が入っている業界団体、BSサミットが掲げるように、我流の請求が指数よりも適切正しいと思うのであれば「王道・正道を征く」のが筋です。
さて、これだけ長い業界人向けの記事を書いたのは理由がありまして、
前述の通り、指数に対して国が予算を取って調査をする事が決まっています。
一度1994年に公正取引委員会から怒られている指数ですが、今回は指数自体の工数としての有効性についての調査になるでしょう。
私が指数に疑問を持っていたころ、様々な資料を探している時に出会ったのが静岡の板金塗装工場、ボディワークスアルファさんのブログでした。
動画も拝見させていただき、メールも送りました。指数の成り立ちもご存知ですので、一度お会いする機会があればと考えています。
国が調査をして一定の解決を見せる前に、今回のような記事を書いておきたかった。元アジャスターA氏のおかげです。
常日頃から書いていますが、王道、正道を征く板金塗装工場が生き残る世の中になっていただきたいと思います。
最後に、もし元アジャスターA氏に届くのであれば、
根拠資料を送信しても、根拠資料をもとに話をしていただけない事をお伝えしたいです。
レートの根拠、塗装材料費の実額請求に関する根拠資料、場合によっては決算資料の一部まで開示しても、見てもいないか、送られても困るとまで言われた事があります。
根拠となる資料を開示しても見ない人たちに、根拠のない請求が散見されると言われたら、
指数の根拠について資料の提出をお願いしたいですよね。
そして、何年前までアジャスターだったのか分かりますが、
現代のアジャスターに本当に必要なのは送られても困る請求根拠ではなく、
心と身体が健全な状態で働ける仕事量だと思います。
投稿者プロフィール
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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