ボデーショップ佐野

見積書の詳細化(部品代・工賃の内訳、技術料の根拠)、作業前後の写真・動画共有、取り外した古い部品の提示(現物確認)など、具体的な「見える化」の取り組み事例をとして、ボデーショップ佐野の例と、一般的な工場の例や問題点を書いていきたいと思います。

見積書の詳細化について:使用部品は明確にすべき

ボデーショップ佐野では、見積もりシステムを用いて資料作成を行っており、一つの作業に対しての工賃の記載、使用した部品1点1点の部品名称と(あれば)部品品番・部品金額・個数の記載を行っています。
また、1時間あたりの技術料について顧客スペースに貼り出しを行い明確化しており、企業として設備・人員への投資を行ってなお存続できる利益を考慮した工賃となっております。

お客様が求めている見積書としては、充分なものだと思います。

多くの工場がボデーショップ佐野同様に、見積書を作成していると思っていました。
実は、部品代や工賃の内訳について「工賃一式」「部品一式」みたいなまとめ表記をしている会社も2025年現在、まだまだあると聞きます。
首都圏のアジャスターにその割合を聞くと、半分近くあるそうです。
小さい修理工場でも、手書きではなく見積もりシステムで見積書を作成していると思っていました。

そういう工場が本当に半数以上あるのであれば、部品代や工賃の内訳は「詳細化が必要」と言える状況です。
しかし、お客様にとって、見積書に詳細に記載されていても、それを読解する事は非常に困難です。
専門用語だらけですし、私が部品名称を見てもどこについているどのような物か分からないものがあるのに、1点1点全て説明してほしいと言われても工場は困るでしょう。
見積もりシステムの部品イラスト上に無いような細かい部品をどこでどう使っていたかを説明できる工場は少ないと思います。
交換の理由を問われれば、ほとんどの場合、「同時交換だから」「再使用出来ないから」という説明になるでしょう。

1点1点使用部品を記載していない場合のリスク

ではなぜ、1点1点使用部品を記載しないのでしょうか。
手書きだと面倒だから、という事もあると思いますが、最もリスクが高い理由としては、
「本当は使っていない部品を(保険会社に、又はお客様に)請求している(請求したい)」
または、
「新品を使ったと説明しているが、実は中古部品を使っている」
からだと考えられます。

実は、こういったトラブルは(地域性もあると思いますが)BM社による不正請求問題以降も続いているそうです。
もちろん詐欺です。罰は非常に重いです。

1点1点品番まで記載する事は、ご自身の車のために本当に部品の発注があったのかどうかを調べる事が可能となるため、透明性の確保として非常に有効であり、修理工場として当然の責務です。

作業前後の写真や動画は共有は可能か

これは可能です。しかし動画はデータが重いので、コスト面を考えると保存しておきたくない、というのが弊社の見解です。
動画でないと判別が難しい事故による影響もあることにはありますが、できるだけ写真での共有にしたいところです。

お客様からご要望があれば、ここ10年近いデータはほとんど撮影・保存されていると思います。
ただ、お客様にとって欲しいデータがあるかどうかはまた別です。
損害の範囲、修理内容が分かるような写真ですので、保存性(データサイズ)を考慮すると画質やサイズは大きくできません。また、損傷のあった部位以外は鮮明に映っていないかもしれません。

弊社は修理写真などのデータをクラウド化しており、火事や事故によるデータ消失リスクは減少させていますが、ローカル保存の工場も多いと思います。
透明性確保の観点からは、クラウド化が望ましいと言えるでしょう。
車齢が伸びている事を考えると、10年は保存できる環境を構築しておきたいところです。

取り外した部品の提示

透明性確保として、本当に交換をしたという証拠として取り外した部品の提示という事も必要になってくるでしょう。
ボデーショップ佐野では、お客様に求められれば外した部品のお渡しや、確認なども行っております。
しかし、保管場所の都合により、長期のお預かりや外した細かい部品全てのご提示は困難だと思います。
お客様から求められなくても、基本的には保険会社への資料として「車両と交換部品を並べて撮影」という事を行っています。

お客様からのご希望が無ければ、産業廃棄物の保存スペースの都合上、修理後数日~1か月程度までの保管となる工場が多いのではないでしょうか。
弊社でも、月に2回近いペースで産廃業者へお渡ししておりますので、最長2週間の保管というところです。

これがなぜ透明性確保の項目にあるのかというと、「交換したことにして、実は修理している」という詐欺を行っている工場がまだまだ世の中にはある、という事を保険会社も国も認識している、という事ですね。
同じ車種ばかり入庫するディーラー系の集中工場では、うっかり別の車両で取替をした部品を撮影してしまうという”ヒューマンエラー”が起こりえるでしょう。

適法に正しい修理をするには透明性の確保は当たり前

私、代表の佐野は「見積書作成、写真の保存、部品の提示など、出来て当たり前」だと思っていましたが、そうではない工場もあるという事が2025年に分かりました。

BM社による問題は氷山の一角で、ディーラー系の集中工場による不正請求(こちらこちら)など、顧客の信頼を失うニュースが非常に多くなっています。

当たり前のことを当たり前にする、王道・正道を歩んでいく工場が生き残る社会になる事を望みます。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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