ここ数年ぐらいでしょうか。
特に国産ディーラーの集中工場では、事故修理の入庫に数か月待つという話を耳にします。
最近では、「3か月後に最短納期で修理する」という内容で、保険会社との打ち合わせを含め、ご予約を進めているディーラーもあるようです。
この”最短納期”を実現するのであれば、部品を事前準備しておいた方が良いわけですが、
事前準備にあたりリスクのある修理契約をしている(又は、修理契約をしたという認識すらない)可能性があると考え、
危機感を覚えたためブログ記事としました。
数か月待つ事になるであろう業界動向としての待つ要因原因、
リスクとボデーショップ佐野でのリスクに対するご説明例、
リスクが顕在化する一例について、以下に記載します。
なぜ数か月待たされるのか(作業しきれない要因)
板金工、塗装工の高齢化もあり、他の業界の例に漏れず自動車修理サービスでも人手不足の波が押し寄せています。
米国ではブルーカラーの給与がホワイトカラーを超えた、という報道もありますが、まだ日本では「自動車修理工(整備士を含む)は給与が低い」と思われています。
ここ最近の求人票を見るに、給与などの待遇面でも改善されている傾向にありますが、改善されはじめたのはここ1年ほどです。
「ホワイトカラーはAIによって未来が暗い・・・よし、自動車整備士になろう!」と思っても、整備工場は専門学校を出ているなど、整備士としての国家資格ないと相手にしてくれないかもしれません。
板金工・塗装工に必須の国家資格は2025年現在ございませんが、何も出来ない新人を取る余裕がある工場は・・・まだ少ないかもしれません。
ディーラーの集中工場が他社より”強い”求人票で人が取れているかどうかはさておき、
数か月待たされるようになったのは、理由はおおよそ以下の通りでしょう。
- 周辺修理工場の倒産による集中
- 信頼できる修理工場が分からないので、ディーラーへ相談する
- 新車数年以内だと一般修理工場で修理を断られる
不景気による軽鈑金の需要も高まる中、自動運転時代が控える中、新規工場への投資というのもディーラーとしては難しいかもしれません。恐らく、一部のディーラーに依頼すると数か月待たされる、という状況は10年近く改善しないのはないでしょうか。
3カ月後に1週間で直すと言われた場合の予約リスク
当然、どの工場もボーナスを出して”強い”求人票を出したいのですから、ご相談にいらっしゃったお客様を離したくないようです。
「3か月待ちですね!予約を入れていただかないと、修理は受付られません。入庫してから部品を発注すると納期に2-3週間かかりますが、部品を注文しておけば1週間で終わりますので、予約には部品発注を必須としています。また、1か月後に部品発注すると部品代が値上がりしているかもしれませんので、今注文した方が安いです。ご予約ですね。それでは、注文しておきます。」
というようなトークが想定されます。
弊社は国産ディーラーさんとの付き合いが少なく、国産ディーラーさんのお仕事を受けておりますが、大体1週間以内に入庫となっておりますのでこのようなトークはありません。
弊社が3か月待ちの状況で部品発注を促す場合、以下のようなリスクについてご説明します。
- 部品を発注すると返品ができませんので、修理をしなくなった場合には部品代をご請求します。
- 入庫してから状態・状況が変わって部品交換が必要なくなっても、発注している部品代をご請求します。
- 修理入庫までに他の事故を起こす等で買い替えとなった場合でも、部品代をご請求します。
これならまだ良い方で、場合によっては予約時に部品代を請求されるかもしれません。
部品代を請求されない場合は、恐らく車両保険や対物保険による保険金入金を前提としているためだと思います。
当然ですが、「引っ越すのでそちらには出せません」もあり得ますが、部品代は請求されるでしょう。
リスクが顕在化する例:予約日前に大きな事故を起こしてしまう
パッと思いつくリスクとしては、
”大きな事故を起こして全損、車を買い替える”パターンです。
例として、それなりの左側面の修理で4か月後に修理入庫、という事で予約をし、
ドア2枚を発注しておきました。
とりあえず車には乗って運転が出来ましたが、
修理まであと1か月というところで大きな事故を起こしてしまい全損、車を買い替える事になりました。
このようなケースでは、修理契約の内容や保険の内容にもよって大きく変わりますが、
一例として、修理のキャンセルは出来るが部品代は請求される、
仮に大きな事故の損傷が120万円分、車両保険価額が100万円、最初の事故が60万円分(内部品代30万円)とします。
更に、最初の事故でドア2枚交換のため60万円の保険金が確定し、ディーラーに既に支払われているとします。
本来であれば、全損で100万円+α(αは契約内容によります)が支払われる内容ですが、「既に60万円分の損害が確定されており、そこが直っていないので、60万円は支払えません」となる可能性が高いです。
ディーラーに最初の事故の修理をキャンセルすると、部品代30万円を請求されたので、最初の事故の保険金として30万円がディーラーから支払われました。
直しもしない車の部品代が30万円・・・保険金を超えて直そうとすると、追加で20万円かかり、修復歴(いわゆる事故車)扱いとなります。
買替しようとしても保険金は70万円+αです。同じ車を中古車で買おうとすると、140万円します。
保険に入っているのに、修理の予約をして部品発注をしていたために、100万円の保険金を受け取れる契約にもかかわらず、70万円の受け取りになってしまった、という一例です。
まとめ
本当に数か月先の入庫予約をしなければならないのか、
キャンセルの場合の規定について説明があったのか、
その規定にリスクはないのか、予約前に一度考えてみても良いかもしれません。
地域にもよりますが、ディーラーよりも腕の良い一般の修理工場は首都圏なら多いと思います。
(東京都では一般板金塗装工場自体が減少傾向にあるので、ご自宅から10km~20kmぐらいまで範囲を広げた方が良いかもしれません)
腕の良い工場の見分け方は非常に難しいですが、比較的口コミが書きやすい病院等と比べると、
Googleマップの口コミの★は比較的信頼性が高いと感じます。
基本的に、口コミをした人は「事故を起こした」と思われてしまう事から、
口コミを投稿するハードルが他の業態と比較して高いと考えられます。
それでも口コミを投稿するという事は、「よほど嫌な目にあった=腕や対応が悪い」か、「よほど信頼できるか=腕や対応が良い」のどちらかだと推測できます。
キャンセル規定をしっかり説明できる修理工場は対応が良い工場だと思いますし、
対応が良い工場は腕も良い場合が多い印象です。
予約したがキャンセル規定については聞かされていない、という場合には、
突発的な要因でキャンセルする事になった場合のお金の流れや、
事前に保険金をディーラーで受け取っているのであれば、キャンセルで返金されるのかなどを確認しても良いかもしれませんね。
投稿者プロフィール
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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