傷なし事故でも請求できる!キズが無いと判断するのは誰なのか

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「傷なし事故」で検索される方が多いので、傷なし事故でも保険請求できる、という記事になります。

実際に起きた傷なし事故の事例については、別の記事で書いています。

ただし、実際にはぶつかっていない場合、損害賠償としての請求は困難です。
「ぶつかったはずなんだけど、キズが分からない」
「元々の傷が多すぎてどれが今回か分からない」
という場合の記事になります。

車両保険を使って修理しないで保険金を貰う場合の記事や、被害事故で修理せずにお金だけもらいたい場合の記事も参考にしてください。

事故現場で傷が無いと判断するのは危険

事故現場では気が動転している方もいます。
気持ちを落ち着けたい一心で、「車に傷は無さそうだ」と、加害者が被害車両を見て発現すると、思わぬトラブルの元となります。

仮に傷が無かったとしても、ぶつかっていれば押された事によって機能に不具合が出る場合や、製品寿命が縮む場合、鈑金塗装工場が見ると損害が発覚する場合もあります。

事故現場で傷が無いと判断する事は、誰にとっても良い事はありません。

傷が無いと誰が決めるのか

被害事故でも加害事故でも、自損事故で相手が居なくても、ぶつかったはずなのに傷が無い、見当たらない、どれか分からない、という方がこの記事を見ているのではないでしょうか。

ケースにもよりますが、”傷が無い事を誰が決めるのか”という問題があります。

被害車両の場合

被害事故の場合、損害賠償請求権は被害者にあり、損害を立証するのも被害者ですので、被害者が損害がある事を立証する必要があります。
つまり、加害者に対し「おまえのせいで起きた事故なんだから、お前が判断しろ」と言ってきても、加害者が応じる必要はありません。
(ここで「傷が見当たらないので、事故は無かったことに・・・」と言うとトラブルの元なので、任意保険に加入していれば保険会社任せが楽でしょう)

被害者が損害を立証するため、被害者が傷が無いと言ってしまうと損害は無くなります。

加害車両の場合

加害事故の加害車両については、気になる傷がなければ修理しない、損害としないというケースもあり得ます。
例えば、自身の過失が大きく、損害としない事で事故全体の損害額が減少し、事故に関する自己負担額が減少する、という事が考えられます。

ドアミラー同士の接触でどちらも今回の事故の傷が良く分からず、自損自弁(お互いに相手の車の修理費は見ない、自分の車を直したければ自分で支払って直す)という事も、このケースに近いでしょう。
しかし、保険を使うようであれば、一度プロに見てもらった方が良いと思います。
傷が無いからといって、損害が無いとは言えません。

相手がいない事故の場合

事故現場でキズが無いと判断する危険性は先に述べました。

可能であれば、電柱やガードレールなどの対象物の写真を、全体が映る距離とアップで撮影し、キズが無い証拠を残しておきましょう。自身の車についても同様です。

「ぶつけたけどキズは無さそうだ」と警察に連絡した後に、別の車が同じ箇所に当て逃げをしていた場合、あなたがその当て逃げ車両の作ったキズの加害者だと思われるかもしれません。
相手がいない事故では、キズが無いと判断するよりも、証拠を残しておく事が優先です。

見た目に傷がなくても、ぶつかっていれば損害はなくならない

傷だけが損害ではありません。

例えばドアミラーがぶつかったのであれば、内部機構に負荷がかかる事で反対のミラーよりも早く壊れる可能性があります。
センサーのついている箇所(バンパー等)であれば、センサーの動作不良を起こす要因となったり、ズレによって今まで反応していないものにまで反応する場合や、反応してほしい時に動かない可能性もあります。
レーダーの動作条件を考慮すると、レーダーが動作しなくなる可能性が出る、という事も考えられます。

素人目に見て損害が無くても、プロである鈑金塗装工場の人間が見る事で損害を発見できる場合もあります。
上下左右の隙間の違いや、隣接する部品との距離の違い、僅かな歪みや新車状態との差を見つける事も仕事です。
もちろん、今回の事故かどうか鈑金塗装工場で判断するのは困難です。これは、事故現場を見ていたとしても確定的な判断は下せないかもしれません。

見た目に傷が無いから修理費は0円だ、見た目に傷が無いから安いはず、という考え方は、被害者にとって受け入れがたいものであることが分かると思います。

保険会社のアジャスターは同一事故かどうかの勉強をしている

任意保険会社が事故に関わる時は、今回の事故と同一の損害かどうかを判断するのは任意保険会社になる事が多いです。

佐野はよく「保険会社はあなた(契約者・被害者)の味方でも工場の味方でもなく、株主の味方です」という言い方をしますが、アジャスターの仕事には、同一事故かどうかの判定も含まれていますし、そのための勉強をしています。

鈑金塗装工場の仕事は損害の見積もりを出す事と、損害を直す事であり、同一事故かどうかに対しては見解を述べるに留まります。なぜなら、事故の当事者ではないからです。決定権はありません。
保険会社は、その立場(契約者に代わって損害を賠償する、または損害賠償請求権を持つこと)から事故の当事者としての立場になる事が考えられるため、その判断を下したり、契約者に説明の上納得してもらって判断を下す、といった事があります。

相手のバンパーが元から傷だらけで、今回の傷が分からない

という場合でも、保険会社は株主の味方で極力保険金を支払いたくないので、必要な範囲の損害賠償で済ましたいという意向があります。
しかし、保険会社は早期解決の味方(早期解決により人的リソースの消費等を抑える事で、経費を抑える)でもあるので、数万円で揉めるよりも支払ってもらった方が良いと判断する事もあり得ます。

保険会社の立場にたった時の考え方を持つ

これは別で記事にしたほうが良さそうです。

先の説明より、保険会社が、契約者の味方でも、被害者の味方でもないという事が分かると思います。
あなたが株主であれば、少ない保険金で保険を使って等級を下げて保険料をいただけるのが良いお客様で、保険金を抑える支払い担当が優秀で、トラブルが少なく早期解決して弁護士費用等がかからないように仕事をして、不払いが無いのが理想的です。
あなたが株主であれば、支払ってもらった保険料よりも支払った保険金が高いのが良くないお客様で、トラブルが多く解決に時間がかかり弁護士案件となる割合が高いのが良くない担当者です。

しかし、それでも任意保険は契約すべき存在です。

まとめ:傷がなくても損害はあるし、請求もできる

もちろん、接触していても傷がないし、損害も無いというケースもあります。
しかし、最近の車両は装備の高度化が進み、傷が見当たらない部品からエラーが出る事もあり得ます。
バンパーの取替でフロントガラスにある自動ブレーキ用のシステムのエーミングを必要とする場合もあり得ますし、ドアミラーの損傷で全方位カメラのエーミングが必要になるなど、修理代の高額化もあります。

加害者の方がこの記事を読んでいるようでしたら、被害者の立場に立って自分の言葉がトラブルにならないか考えていただいた方が良いと思います。
「5万円くらいで直るでしょ」という言葉を言われて、20万円の見積もりが出た時に被害者がどう思うか。加害者から「なんで取替をする必要があるんだ」と言われた時にどう思うか。
修理工場から「センサーの誤作動があるかもしれないので取替します」と言われたのに加害者から「そんな大きな損害じゃないはず、取替の必要なんてない」と言われた時にどのような気持ちになるか。

円安の影響や人材不足の影響もあり、工賃も部品代も以前より高くなっている傾向にあります。
過去の知識は役に立ちません。1年前と比べて同じ修理が1.3倍する、1.5倍するという事もあり得る世の中になりました。

傷が見当たらなくても請求権がなくなる訳ではありません。
誰が傷が無いと判断する権利があるのかを考えていただければ、トラブルは少ないと思います。

最後に、保険会社は株主の味方ですが、保険会社の担当者はあなたの味方の場合があります。
しかし、保険会社の担当者は仕事中ですので、あなたの味方であり続けられるかどうかは分かりません。別の案件もありますし、評価制度上味方になりきれない時もあるでしょう。
保険会社の担当者が例外なくすべての契約者の味方であり続けた場合、保険料に転嫁され、他の保険会社よりびっくりするくらい高額になるかもしれません。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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