保険会社の人が、全て知っているわけではない話

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NEWS-コラム

ほとんどの方は、
「保険会社の人は全員プロだから、私より知識があるし、間違っている事は言わないだろう」

と考えていると思います。

今回は、必ずしもそうとは限りませんよ、というお話です。

まず、電話受付の方は車に詳しくない方も多いです。
専門用語にも詳しくない場合もありますが、約款の理解が乏しい方もいらっしゃいます。

事故の担当の方や、事故の査定や同一事故の確認等を行うアジャスターさんとなると、約款については理解がある方が多くなります。
しかし、法律への理解に乏しい方もいらっしゃいます。

保険契約は、全て約款と法律により判断されるため、契約者や被害者の方の主張は、全て約款と法律により「どこまで話が通るかが決まる」といっても過言ではありません。

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例えば、このようなケースがありました。
事故修理には、例えばバンパーの交換などが発生すると交換バンパーというゴミが出ます。
車両所有者様、又は使用者様が「まだ使えるので、持って帰ります」と言えばこれはゴミではないわけですが、工場側はゴミとして(お客様に代わり)捨てる必要があり、これは産廃となります。

全損になると、保険会社さんによっては約款に「全損で車両保険をお支払いする場合、所有権が保険会社に移る」というような旨が記載されている場合があります。
そのため、全損になったが修理したい場合は、保険会社から保険契約者に所有権を移すための費用(買取費用)がかかる場合があるという事になる訳ですが、分損の場合は所有権が保険会社に移りません(当たり前ですね)。

しかし、先日保険会社の人に「捨てる部品がまだ使えそうなので、回収します」と言われました。

もちろん、分損の事故です。
分損であれば、捨てる部品の所有権は弊社にも保険会社にもなく、お客様にあるものと考えられます。
そこで私は、「取り外した部品が捨てて良いものか、お客様が持って帰りたいと思うか、捨てても良いけど人(保険会社)にあげたり売ったりしていいかどうかは、弊社で判断できる内容ではありません。車両所有者にご確認ください」とお伝えしました。

当たり前の話ですね。持ち主以外の人が、持ち主に断りもなしに勝手に持ち主の物をどうこうできません。
保険会社は「全損の場合は所有権が保険会社に移りますよね?だからその部品は保険会社の物です」と言いました。
私が「今回は分損ですよね。分損の場合も所有権が保険会社に移るのですか?約款のどこに記載されていますか?と言いました。

保険会社は、「確認します。」とのことで、
最終的に、保険会社から「やっぱり部品は持って帰りません」と言われました。

私の予想ですと、過去に所有者に断りもなしに、修理工場に確認するだけで勝手に人の物を保険会社が持って帰っていたという可能性があります。
会社ぐるみで行っていると考えられますが、もし会社ぐるみでないのであれば、アジャスターがお小遣いにしていたかもしれません。これは大問題ですね。

何も知らない工場は、お客様の所有物である廃棄予定品を、所有者の断りもなしに勝手に保険会社にあげているかもしれません。
アジャスターがお小遣いにしているパターンの場合は、工場がアジャスターに売却している可能性も否定できません。

その保険会社の決算公告を見ると、その他の経常費用に6,600万円の利益が計上されております。
もしかしたら、この中に皆さんの修理から出たゴミを、断りもなく持っていって販売したお金があるかもしれません。

事故に関するプロのようなCMを流していますが、約款を理解せず、曲解し、一般修理工場よりも約款の知識や法律に疎い場合もございます。
(多くの一般修理工場や保険代理店は、修理に関する約款の理解も、損害賠償の知識も乏しいです)
保険会社のご説明に納得がいかない場合、まずは「約款のどこに記載されていますか?」と質問すると、詳しく説明してもらえるか、場合によっては主張が変わる可能性があります。

相手はプロだから、間違った事は言わないだろうと考えず、おかしいと思ったらおかしいと主張しましょう。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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