板金工場の皆様は、BSRwebを定期的に見ておりますでしょうか。
BSR本誌にて鈑金工場必見の”漫画【給料が上がらないのは安い見積りのせいだと疑ってみたが意外と奥が深かった】”で原案をされている石芳さんが、こんな記事を書いておりました。
自動車保険、収益悪化は本当か考察してみた(本当にしんどいかも……)
今回は、大手損保のIR資料も見ながら、収益は悪化しているのか、その要因は何なのか、今後の自動車修理業界と損保業界の見通しを佐野なりにまとめた記事にしてみたいと思います。
(あくまで個人的な見方や考え方の提示ですので、BSRwebさんや石芳さんがどうこう、という事ではありません)
大手損保のデータを見る前に
石芳さんは「任意保険の損害率」のデータを示しており、それ以外のデータとして保険金支払い金額を参照しています。
しかし、AI化・省人化が進めばコンバインドレシオ(集めた保険料収入のうち、実際に保険金の支払いなどの費用にどれだけ使われているのかを示す数値)は減少する傾向にあるでしょう。
単純に考えれば、100%からコンバインドレシオを引いた数値が営業利益になると言えます。
100%を超えると健全ではないため、100%に近くなる見込みであれば保険料が値上がりする可能性が出るでしょう。
コロナ禍ではコンバインドレシオは90%未満となる事がありました。出かける人が減って、損害率が減少していたためですね。
その時に十分な利益がでていましたが、損害率の上昇とともにコンバインドレシオは悪化する未来が見えていると言えるでしょう。
大手損保3社のコンバインドレシオ
コンバインドレシオについては、東京海上は念のためIR資料を、損保ジャパンとあいおい・三井住友はAI(Copilot)に次ぎのように確認しました。「大手損保各社の自動車保険におけるコンバインドレシオのデータはありますか?」で直近のデータが、「2020年度のデータはありますか?」で2020年度のデータを出してもらっています。
東京海上日動火災:自動車保険に限ったデータはない、とCopilotも回答しておりました。しかし、収入保険料の比率は自動車保険が最も高いため、大きく離れた数値ではないと予測します。
コンバインドレシオは2020年度88.2% 2024年度94.7%でした。
損保ジャパン:Copilotによると、2020年度のコンバインドレシオは、94.5%でした。2024年度の第三四半期で92%前後でした。
三井住友・あいおいニッセイ同和:Copilotによると、2020年度は95.8%でした。2023年度で90-95%とのことでした。
コンバインドレシオが100%を超える背景
Copilotへ以下のように聞いてみました。
「具体的な数値で、東京海上、MS&AD、損保ジャパン合計3社のコンバインドレシオと損害率は分かりますか?」
「この3社のコンバインドレシオが100%を超えている時の損害率が2000年以降にどれくらいあったかを教えてください」
すると、損保ジャパンで3年度、東京海上とMS&ADで1年度ずつ計5年度分でてきました。
備考欄にはその背景まで出してくれたのですが、「自動車保険の損害率高止まり」という1点のみで、事業費率の上昇が3回出てきています。
ブラック化していると思われる損害調査
鈑金塗装工場は、日常的にアジャスターと呼ばれる損害調査の資格取得者と話をして、
協定という修理費の決定を行っています。
想像を絶するかもしれませんが、アジャスターによっては1つの事故の協定に1時間かける事もありました。しかし、そんな時代は勝手に終わってしまいました。
ここ数年は「残業が月40時間を超えている」「サービス残業をしている」「電気が消されるので暗い中で仕事をしている」「今日はリモートなので残業にならない」という愚痴が出るほど、ブラック化が深刻な問題となっています。
(あまりに深刻なのボカシておりますが・・・どこの保険会社も似たようなものだと思います)
以前記事にしていたかもしれませんが、BM問題でAI化・省人化がストップどころか後退してしまい、
結果的に新規の雇用が追い付かず、ブラック化している・・・という現状のように思います。
アジャスターの求人市場はまさに売り手市場となり、ブラックな保険会社を退職して調査会社(外注アジャスター)に転職する人も増えるでしょう。
アジャスター1人で処理できる量には限界がありますので、事業費が増加するのはもちろんですが、1件あたりに割ける時間が短くなると損害率が上昇する可能性はあります。
まとめ:収益悪化は損害率の上昇だけでなく、事業費の上昇もある
今回、データはほとんどAIに頼って出しております。
事業費の内訳や近年の事業費の増加で割合が大きいものを確認すると、
DX投資と人件費の割合が大きいと出てきました。
DX投資については、2017年度に事業費率が最大化した要因の一つでもあるようで、
省人化・省力化の流れがあった事を伺わせます。
損害率の上昇は修理工場の値上げだけでなく、車両構造の変化、損害調査の変化など、様々な要因によってもたらされていると思います。
保険会社は危機感を覚えているのは間違いないので、いつまでも業界がこのままではないでしょう。
しわ寄せが契約者にいくのか、工場にいくのか、保険会社従業員にいくのかは分かりませんが、
修理工場はこれからも透明性を確保し、値上げの理由をしっかり述べられるようにならないといけません。
投稿者プロフィール

- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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