まだ全国でも扱っている工場が少ない、実作業を依頼せず、保険金の請求のみを行うという案件について、ご相談が増えております。
現在のペースで増え続けると、値上げ等の対応が必要となるかもしれませんが、現時点では非常に喜ばれるサービスとなっています。
なぜ取り扱う鈑金塗装工場が少ないのか
見積りは無料、現場が動いた事以外はお金にならないという考え方が鈑金塗装業界にはございます。
しかし、1時間あたりの単価には見積りを作る人件費や、顧客対応・保険会社対応・協定に関わる時間の人件費がかかっているため、現場が動いていないところでも経費がかかっています。
ここに工場側が価値を提供できているのであれば、有償での見積りは自然な事ですが、
「見積りなんて無料が当たり前」という考え方が工場側にもお客様側にも根付いているため、
雹害や全塗装のように打ち合わせや見積り、場合によっては協定にも時間がかかる見積もりの案件を断るような流れが出てきてしまいました。
保険会社見積もりが安くなる理由(見落とし・写真起点査定)
保険会社のアジャスターは、各保険会社が定めている「地域対応単価」に「指数(工数)」を乗算、つまり掛け算をして工賃を算出します。
そして、この地域対応単価は、ここ7年ほどでの塗料価格の毎年のような上昇や人件費の上昇をある程度は反映してきているものの、多くの工場で必要とする水準には達していない、という状況だと、佐野は解釈しています。
一般的に、地域対応単価はディーラーの工賃よりも低く設定されていますので、ディーラーと全く同じ内容の見積もりを保険会社が作成する場合、ディーラーよりも安くなります。
マニュアル撮影/リモート査定の限界
今回、保険会社の雹害確認方法は「カメラを持った見積もり知識の無い人が、最低限のマニュアル通りに写真を撮影し、その写真を基にアジャスターが見積りを行う」という方法でした。
これに対し弊社では、お客様にご来店いただき、しっかりとお車を拝見させていただきました。
結果として、見積り金額に倍以上の差がでました。
なぜこのような差が出たのか、一番大きな点は「保険会社による見落とし」です。
マニュアルが悪いのでしょう。車内の写真を1枚も撮影していなかったようで、キャンピングカー仕様である事を保険会社は認識していませんでした。
「お客様に言われていないのでキャンピングカーと気付かなかった」というのは、保険会社のミスであり、実際に見落とされたまま支払われているケースもあると思います。
お客様からは「どの修理工場に行っても、保険会社の見積りでは作業が出来ないと言われた」というお話をいただきましたが、保険会社が経費を出して依頼した人がカメラを持って撮影しても、肝心な部分が撮影できていなければ、当然このような事が起こりえます。
意図的に見なかった、故意に安い見積りにしようと思ったわけでは無いと思いますが、
同様の事例が全国的に発生していても不思議ではありません。
地域対応単価の妥当性と課題
保険会社の見落とし以外に、工賃の部分でも差がありました。
地域対応単価には、妥当性がありません。
算出根拠を確認しても、詳細な説明はどの保険会社もできません。
統計を基に算出しているのであれば、最低限答えられるはずの数字も答えていただけません。
「これぐらいで工場が潰れてないからいけるだろう!」という地域対応単価を数十年続けてきた結果、
「値上げされると損害率(支払い保険金額)が上がってしまうので値上げさせたくない」という一心で地域対応単価と実際の工賃に解離が出ていると言えます。
まとめ:保険会社が出す見積りでは、直せない時代になった
よくある質問(FAQ)
Q1: 雹被害で保険会社の見積もりが低く出るのはなぜですか?
A: 写真査定の場合は、撮影漏れや見えづらい損傷が反映されない事が考えられます。地域単価や工数が十分に考慮されていない、オプション等の装備差による脱着作業が見落とされることも主な原因です。
Q2: 「保険金の請求のみ行う」とは何ですか?
A: 実際に修理することなく、損害額の算出(見積もり)と協定を行うご依頼です。ボデーショップ佐野では、このサービスを提供し、買い替えを検討されている方や損害が気にならない方に好評いただいております。
Q3: 保険金のみ請求し修理をしないと、契約者にどんなリスクがありますか?
A: 実際に修理をする場合、値上げなどにより修理が出来ない場合や、契約内容により損害部位について別の事故が発生した場合に保険金請求できない可能性があります。
Q4: 実車確認と写真査定でどれくらい差が出ることがありますか?
A: 事例によっては写真査定の数十万から倍額以上差が出る場合があります。へこみ等の損害の範囲・写真では分かりづらい装備やモール類の損傷、小さな損害などが影響します。
Q5: 契約者はどのように対応すれば良いですか?
A: 埼玉県新座市までお越しになれる方は、ぜひボデーショップ佐野へご相談ください。茨城県からお越しいただく方もいらっしゃるほど、このような案件に対応できる工場は少ない印象です。
Q6: 地域対応単価とは何ですか?
A: 保険会社が採用する工賃の時間単価を都道府県別に設定した数値で、実勢と乖離していると保険会社の見積もりでは直せないという事例が発生しやすくなります。
車両の写真から見積りを算出するAIについては、私の知る限りでは開発されていたものの、恐らく頓挫しています。
この大きな理由は昨年2023年に業界をゆるがしたある問題で、省力化を図ろうとしていた中に問題が発生し、AIによる見積りが社会的に行いづらくなったためだと佐野は考えています。
人が行う上でミスはつきものなので、当然見積りにもミスや見落としがあります。
車種が同じでもグレードごとに異なる装備の見落とし、オプションの見落とし、社外品の見落とし、お客様ご自身でのカスタマイズの見落としなど、
修理工場としても「それはお客様から言われなければ分からないよ」というものもありますが、
保険会社が見落としを行うと、不払いにつながるのではないでしょうか。
今後、保険会社が変わらなければ、保険会社の見積りで修理している工場は、
設備投資や設備の更新が出来ないか、人が雇用出来なくて廃業せざるを得なくなるでしょう。
魅力的な業界に映らないため、整備工場や修理工場に若い人が入ってこない業界となりました。
不正をしている工場だけが生き残るような仕組みを、保険会社が作らないようにしてほしいものです。
投稿者プロフィール
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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