最近、お客様から「缶スプレーでボデーの色と同じカラーコードの物を使ったけど、色が違う」というお話を受けました。
これについて、事故修理(ほぼ)専門の鈑金塗装工場としてお伝えした内容を記事にしました。
同じカラーコードの車を10台並べたら、全部色が違く見えても不思議じゃない
新車製造ラインについて詳しくはありませんが、塗料にも原料があり、自然の原料を使用している物もあるため、品質が必ずしも一定とは言えません。
ヒトの身体的な差がゼロではないため、色の見え方は人により異ります。同じカラーコードとして販売されている車を10台並べて、全て同じ色に見える方もいらっしゃれば、そうではない方もいらっしゃるでしょう。
新車が必ずしも補修塗装をされていないとも言えず、パッと見は同じ色に見えても、よく見るとこっちの方が若干赤い、こっちは青い、こっちは少し明るい、こっちは少し中のメタリックがギラついて見える、この角度で見るとこっちの車の方が色が明るい、という何かしらの差がある場合がほとんどではないでしょうか。
ここからは補修塗装(鈑金塗装)の話になりますが、上の画像の通り、まったく同じカラーコードでも、調色時に調合する塗料は少し異なっています。
光の当たり方や角度でも違う色に見えます。少なくとも上の画像の左、アウディクーペと書かれている色は他の色よりも明るく、冷たい印象に見えます。
真ん中が一番赤が強いように見えますが、皆さんにとってはいかがでしょうか。
新車の塗料が売られているわけではないという問題
補修用の塗料は、新車の塗料と同じものを同じ配合で作成し販売されている、という訳ではありません。
塗料メーカーが調合用に販売している塗料を、画像のようなカラーチャートを使って色を作成します。
実際の車両の色に近いカラーコードでまず調色し、テストピースと呼ばれる板に塗装をして、実際の車両との色の差を見ます。
そして、実際の車両が少し赤っぽければ赤系の補修用塗料を足します。
この時問題なのは、「その赤にも複数種類があり、ただの真っ赤ではない」という事です。
例えば、デジタルのイラストなら色を指定して作成する事が可能です。
「赤を3/256増やしてみよう」という事は、自動車用塗料の調色ではできません。
赤でもいくつかある色から選び出し、赤系の色をカラーコード通り300グラム作成した色に6グラム足して、テストピースに塗装し、実際の車両と見比べて・・・といったような作業を繰り返し、調色します。
市販の調色済み塗料やタッチペンの色の精度は、「合えばラッキー」
つまり、実際の車両に合わせて調色しなければ、色が合う方が稀、だと考えた方が良いです。
昨今の新色となる色は、難しい色も多く、「補修塗装の現場を考慮していない」色も出てきており、ディーラー系板金塗装工場でさえ嫌がる色もあるぐらいです。
調色済み塗料でも、現車合わせを行っていない色は「合えばラッキー」です。
加えて、見た目が近いからといって、違うカラーコードの色(例えば、自分の車はトヨタの1F7というシルバーで、タッチペンはスズキのZ2Sというシルバーのタッチペン)が合うかというと、まず合いません。
同じカラーコードでも合わないのに、違うカラーコードで合うはずがありませんね。
自分で塗装したいが、色はしっかり合わせたい場合はどうすればいいのか
ご自身で塗装したいが、色もしっかり合わせたい。
という場合は、鈑金工場によっては調色(調色済み塗料の作成)のみお願いできる事もあります。
工場によって使用している塗料の銘柄が異なるため、可能な限り安く調色済み塗料を作成してほしい場合は、規模の小さい工場に依頼するのが良いかもしれません。
工場の規模が大きい場合は、使っている塗料の銘柄がちょっと良いもので、安くは無い可能性があります。
(その代わり、作業性が良いかもしれません)
塗料メーカーのサイトに、銘柄別に塗料の扱い方(試食乾燥時間や注意点)が記載されている場合があるので、どういった銘柄の塗料で作成したのかを確認するのは大事かもしれません。
しかし、塗料というものは銘柄によって若干のクセがあり、例えば塗料が変わると腕の良い塗装工であっても、慣れている塗料と同様に塗装できるようになるまでは時間がかかります。
そのため、鈑金工場で調色した塗料は色こそ合っているかもしれませんが、塗装の腕による部分や、下処理、ゴミ・ブツの処理、クリア塗装、磨きなどの各工程のミスが響いて、色以外の問題が起きるかもしれません。
カラーコードのスプレーなども売られていますが、鈑金塗装の工賃が決して安くないのは、理由があるのです。
ちなみに、ボデーショップ佐野でも調色のみのご依頼を受けておりますが、安い塗料を置いておりません。
金額重視で調色済み塗料を入手したい場合は、お近くの鈑金工場さんにご相談ください。
鈑金工場によっては、金額を決めづらいから不可能ではないけど断る、という可能性もございます。
調色済み塗料をいくらで販売して良いか分からない=原価管理が出来ていないという事もありますが、現在塗装材料は高騰している上に、定価が無い場合が多いので値決めは難しいと思います。
まとめ
・カラーコードで販売されているタッチペンやスプレーなどの商品は、まず色が合いません!
もし合っていたらラッキー、と考えて購入しましょう。
色によってはカラーコードでも合いやすい色(例:トヨタの黒、202等)もありますので、販売店に相談すると教えてくれるかもしれません。
特にタッチペンは、色が合ったとしてもクリアーをタッチペンするのかどうか、クリアーのタッチペンはどう作業するのかで、色が違うように見える事があります。
もちろん色にもよりますが、色の上の透明のクリアー層の厚みでも色が違って見えるのです。
タッチペンのメリットは、数メートル離れればキズが分からなくなる事や、錆びの進行をある程度抑えられるという部分だと考え、しっかりとした修理がしたい場合は、鈑金工場にご相談された方が良いと思います。
スプレーの強みは価格とお手軽さですが、スプレータイプのクリアーは仕上がりがいまいちと聞いたことがあります。
色がバッチリあっても、クリアーの仕上がりが良くなければキレイな仕上がりにはなりません。
簡易補修はあくまで簡易補修です。
コストと仕上がりのバランスについてのご説明を得意としておりますので、迷ったらご相談いただければと思います。
投稿者プロフィール

- shusukesano
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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